彼が地上に引き上げられた時。
暗闇の中から突然に明るい場所に出てきたと言うのに。
頭がきちんと正しく座っていて、何かまわりを落ち着いて見渡して。
いるように見えた。
オレンジの腕が彼を抱きとめているのと同時に。
彼の腕がしっかりとオレンジの背中に回されていて。
どちらが、助けてもらっているのか判らないような。
そんなしっかりとした手の回しようで。
その手の感覚をオレンジの人はたぶん一生忘れないだろうなあと。
彼のしっかりとしたあの手の回しように。
助けられた人は、私だけなのだろうかって。
彼はあの中から助けられたのでない。
私は彼に助けられたと想う。